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競馬血統研究家、亀谷敬正氏(Takamasa Kametani)談1話目

競馬血統研究家、亀谷敬正氏(Takamasa Kametani)談第2話目

競馬血統研究家、亀谷敬正氏(Takamasa Kametani)談第3話目

2023年ニュースレター

オーストアリアの競馬の仕組み 2020年12月更新

南半球を代表する競馬大国のオーストラリア、芝のレースで世界一賞金が高いレースが開催される競馬場から、年に一度だけ開催があるピクニック競馬場を入れると、400以上の競馬場があり、年間を通じて開催されています。また、国中にTABと呼ばれる場外馬券販売所があり、容易に馬券を購入することが出来ます。カントリー(田舎)での開催になるとダートでの開催も増えますが、殆どが芝でのレースとなります。

日本では、主催者の異なる2種類の競馬がありますが、オーストラリアの競馬は州ごとに統括されてています。 シドニーがある州、ニューサウスウェールズ州ではレーシングニューサウスウェールズRacing NSW、メルボルンがあるヴィクトリア州ではレーシングヴィクトリアRacing Victoria、ブリスベンやゴールドコーストがある州はレーシングクイーンズランドRacing Queenslandといったように、州によって統括団体が異なります。そのため、賞金の配分設定、州生産馬ボーナスなどにも若干の違いがあります。

オーストラリア競馬といえば、レース当日が開催州ヴィクトリア州の「祝日」に指定されている、G1メルボルンカップ(3200m)が圧倒的に有名です。11月の第2火曜日に開催されるメルボルンカップを含み、ヴィクトリア州では10月、11月に高額レースが多く開催されます。

10月のシドニーでは、総賞金AU1400万ドル(約10億円)と芝のレースとしては世界一賞金が高い、ジ・エベレスト(1200m)が2017年より新設されました。

逆の季節となる3月には、2歳馬の最高峰となるG1ゴールデンスリッパーS(1200m)がシドニーで開催され、その総賞金はAU350万ドル(約2億6000万円)と、2歳戦としては世界一となる賞金を誇り、オーストラリアのダービーを上回る高額賞金となっています。

オーストラリアでは、このゴールデンスリッパーが、ダービーよりも、将来の種牡馬としての価値を高めるレースとされています。

賞金が高い州は、ニューサウスウェールズ州と、ヴィクトリア州で、レースは年間を通じて開催されますが、この2つの州の高額賞金レースは、春と秋に開催されます。


高額賞金レースinオーストラリア (1ドル73円換算)

ジ・エベレスト(10月シドニー開催) AU1400万ドル(約10億円)

ゴールデンイーグル (10月シドニー開催) AU750万ドル(約5億5千万円)

メルボルンカップ (11月メルボルン開催) AU730万ドル(約5億4千万円)

コーフィールドカップ(10月メルボルン開催)_ AU500万豪ドル(約3億7千万円)

オールスターマイル (3月メルボルン開催) AU500万豪ドル(約3億7千万円)

ゴールデンスリッパー (3月シドニー開催) AU350万豪ドル(約2億6千万円)


世界トップ100レースのうち3分の1がオーストラリアで開催されているのをご存知でしたでしょうか。1位凱旋門賞に次ぐレースはシドニーで開催されるクイーンエリザベスステークス(芝2000m)その他コックスプレート(芝2040m)、ジョージライダー(芝1500m)コルゲートオプティックホワイト(芝1600m)とトップ10にはオーストラリアの4レースが選ばれています。

賞金が100万ドル以上のレース数は、世界1多い60レースにも上ります。

レース数が多く、未勝利戦も4歳以上、牝馬の活躍の場も多い 高額レース、レーティングの高いレースだけではありません。オーストラリアは競馬大国。賞金の良いシドニーを含むニューサウスウエールズ州、メルボルンを含むヴィクトリア州には、それぞれ年間5662レース、4418レースが開催されています。

未勝利戦は4歳以上まで続き、レース選択の幅が広く、それぞれの馬に合ったレースに出走させることが可能になります。シドニーの競馬場では、土曜開催の1着賞金は最低でも5万8千ドルになります。

南半球の馬の年齢は8月1日で1歳加算されるように、オーストラリアの競馬は8月1日に始まり、7月31日に終了します。

競馬場と調教
オーストラリアには大きく分けて3段階の競馬場があります。

メトロポリタン競馬場
市内にある競馬場で、メルボルンであればフレミングトン、コーフィールド、ムーニーバレーなど、シドニーであれば、ランドウィック、ローズヒル、ワーウィックファームなどがそれにあたります。賞金が高く、G1レースが開催されます。

プロヴィンシャル競馬場
上記が東京競馬場であれば、プロヴィンシャルは南関東といったところでしょうか。市内中心部より、少し離れたところにある競馬場で、賞金はメトロポリタンより低くなります。

カントリー競馬場
地方競馬のような感じで、年に1回しか開催のない競馬場から、門別競馬場のように生産地の近くにあり常に開催があり、準重賞レースが開催される競馬場もあります。賞金は3段階の中で一番低いものとなります。

馬の調教は、基本的に競馬場を利用する調教師がほとんどです。メトロポリタンは市内にあり、賃金が高くなるため、ここをベースとしている調教師の調教料金は一日$160-$180ほどとなります。プロヴィンシャルやカントリーをベースにした調教師は、調教費が割安になります。厩舎のある競馬場に関係なく、どこの競馬場にでも馬を出走させることが出来るので、カントリーの厩舎からメトロポリタンの競馬場開催のレースに出走させることも可能です。カントリーでの調教費は割安になりますが、そのかわり、併せで調教をする馬の能力や、乗り役に限りがあったり、出走させる競馬場までの移動費が高額になる可能性もあります。

調教師は管理頭数の制限がなく、馬主もご自分で調教師を選ぶことができます。厩舎からはイーメールでリポートが届くので、翻訳ソフトを利用すれば、英語が苦手な方でも理解が出来ると思います。日本人の調教師や日本人スタッフのいる厩舎を選ぶと、連絡事項も容易になると思います。

レースのクラス分け
レースのクラスは上位からGⅠ、GⅡ、GⅢ、リステッドとあり、馬の年齢、収得賞金、前走のレーティングによって、希望のレースに出走が可能かどうかが決められます。

初戦は未勝利戦、もしくは2歳馬限定のレースであれば、初戦からG3レースということも可能です。プロヴィンシャルには1-6までのクラスがあり、クラス1は2勝未満の馬が出走可能となります。一度出走をするとレーティングが出ますので、そのレーティングを参考に、牝馬であれば牝馬限定のレースを選んだり、ハンデ戦や馬齢重量戦など、その馬に合ったレースが選ばれ、レーティングや修得賞金に合わせて出走が決定します。 レースによっては、指定レースを優勝しているということで、除外の対象外となる場合もあります。あし毛だけのレースもあります。

トライアル
模擬レースのように、ゲートからスタートし700-1000m程を走らせるものです。実際にスタットブックの情報にトライアル出走として、着順も記載されますが、賞金は出ません。一般的に調教の一環として利用され、デビュー戦、復帰戦までにトライアルをで1,2回走らせてからレース出走となります。またトライアルで良い走りをした馬が、売買の対象にあることも珍しくはありません。

距離
1400m以下のレースが最も多いのですが、オーストラリアのトリプルクラウンは、ランドウィックギニー(1600m)、ローズヒルギニー(2000m)そしてオーストラリアンダービ(2400m)となります。芝での競走が殆どです。

オーストラリアで購買した馬を日本へ持って行く場合
南半球馬を日本で走らせる場合、負担重量の減量が適用されますが、現行の負担重量の軽減量は南半球産2歳馬が7月から12月末までに2200m未満を走る際は3kg、それ以降距離が1000m-1600m以下の場合は翌年の3歳の9月末までが2kg、距離が1601m-2200m未満の場合は3歳の12月末まで2㎏、2歳馬が2200m以上走る場合は2歳の12月末まで4kgが適用されることになっています。(JRA資料による)詳しい負担重量についてはJRAのサイトをご参照くださいませ。https://jra.jp/keiba/rules/weight.html

毎年日本にて出走する南半球馬はそれほど多くはありませんが、8,9月生まれの馬を選べば、2歳になったばかりの馬でも日本で勝ち鞍を上げています。

馬主になるには
オーストラリアでは馬主になるための財政上の制約が全くなく、犯罪歴がなければ誰でも馬主になることが可能です。個人所有の他に、数名で1頭を所有することもでき、登録には最高20名までの個人名が登記可能です。馬主は通常賞金の75%を保持することが可能で(10%を調教師へ、5%をジョッキーヘ)、優勝の場合などには調教師とジョッキーへボーナスが5%程追加で支払われます。日本で言う、一口馬主を御希望であれば、シンジケートで販売されている一口を購買することが出来ます。

馬主としての申請は不要で、購入した馬の登録をする際に、その馬の主としての登録をすることで、馬主となることが認められることになります。

賞金の配当
通常、頭数が少ない場合を除き、10着までの賞金が用意されていて、そのうち83.5%-85%が馬主へ、10%が調教師へ、5%が騎手へ、そして州によっては1.5%が厩務員へ支払われています。

州によっては、賞金総額より1-2%が引退馬支援ファンドや、引退騎手ファンドへ支払われています。

生産
年間約13,000頭が生産され、主な生産地はニューサウスウエールズ州、ヴィクトリア州、クイーンズランド州で、総生産頭数の80%以上が生産されています。種牡馬は2017年のシーズンで609頭、そのうち海外からのシャトルスタリオンは36頭。新型コロナウイルスの影響が心配されている2020年の種付けシーズンであっても、種付け料が10万ドル以上の種牡馬は6頭もいます。種付け料が10万ドル以上となる種牡馬は、2歳時にG1優勝経験のある種牡馬が殆どで、そのような種牡馬は生産された子がセールで高く売れたり、早く結果を出す可能性が高いため、高額の種付け料でも人気があります。

逆シャトルの時代
今では、オーストラリア産種牡馬が北半球に逆シャトルとして送られるのも、珍しくなくなりました。オーストラリアから送られた種牡馬は北半球で、重賞馬を送り出し、その重賞馬が種牡馬や繁殖になり、重賞馬を出しています。豪産エクシードアンドエクセルは元ヨーロッパのチャンピオンマイラー、エクセレブレーションを輩出しエクセレブレーションの産駒バーニーロイがG1セントジェームズパレスステークスにて優勝しています。エクシードアンドエクセルの孫のサンダースノーはドバイワールドカップを2連覇、2020年から日本で種牡馬として導入されています。ファソネットロックや、リダウツズチョイスも、北半球で重賞馬を出すだけではなく、その孫たちも活躍し始めています。

毎年のように増額となっている賞金は、生産業界にも大きく反映しています。賞金も良く、セールも盛況を続けていることから、北半球大手生産者の投資も増え、それに伴い北半球から良血の種牡馬や繁殖がどんどん導入され、オーストラリアの生産業界は好循環に支えられ、芝のスピードを追求し向上を続けているのです。

セール
生産された馬は、1歳馬セールが主流でセールに出てきます。殆どの生産者は1番良い馬をセールに出します。イングリスのブラッドストックチームは、生産された馬を見に生産牧場を回ります。そして、成長具合、血統、予想価格から、各馬がどのセールに向いているかを生産者と話あいます。南半球で最も良血で馬体の素晴らしい、セレクトされた1歳馬が集まるのは、シドニーで開催されるイースターセールです。イースターセールに選ばれなかった馬は、メルボルンで開催されるプレミアセールや、シドニー開催のクラッシックセールなどに登録されます。イングリスのセールに出てくる馬達は、殆どが生まれてから3度は下見がされている馬です。そのため、馬の選択や予算が組みやすいという利点があります。

人気を集め高額になる1歳馬は、2歳のG1戦で活躍できそうな牡馬で、そのような馬にターゲットを絞り、種牡馬用としてシンジケートを組んで購買するグループもあります。それは、2歳馬のG1レースで優勝すれば、高額でその馬を転売できるからです。

転売
オーストラリアでは、重賞を勝った馬でも競走馬として転売をしたり、引退後に種牡馬や繁殖として転売をすることが、良く見られます。種牡馬目的の牡馬に支払われる額は、オーストラリアが世界一高いと言われています。特に2歳馬のG1ゴールデンスリッパーS(1200m)の前には、優勝の可能性の高い馬に、高額のオファーが入り、レースの前に取引が完了することもあります。1歳馬のセールで購買した馬が、1年後にこのG1レースで優勝すれば、2000万ドルという価値が付くのです(血統にもよります)。牝馬も、血統が良く重賞馬であれば、繁殖セールにて100万ドル以上の値をつけて転売が可能です。セレクトされた競馬上りの牝馬や繁殖牝馬はチェアマンズセール、もしくはオーストラリアンブルードメアセールに登場します。

日本のサラブレッドオークションのように、イングリスデジタルのオンラインセールも人気があり、現役馬や繁殖馬が多く取引されています。

生産大国で、賞金の良いオーストラリアの競馬と生産は、上昇気流に乗るように、今後も増々発展を続けていくことでしょう。

オーストラリアで馬を購買されたい方、馬主になりたい方、お気軽にお問い合わせください。 オーストラリア競馬の概要、競馬場、競馬のルール等、JRA(TPC秋山響氏記載)のページもご参照くださいませ。 https://www.jra.go.jp/keiba/overseas/country/australia/